【短】恋ごころ
「ちょ、待ってよ沙耶!!」
「何?」
「まだ行くって行ってない!!」
「でも明日美、暇でしょ?」
「暇じゃないよ」
「でも、明日美の家の方向じゃん。帰る予定だったんでしょ?」
「えっ、いや…」
ビンゴなだけにあって思わず口が閉じてしまった。
ピンチなだけにあって、そう簡単に誤魔化す言葉なんて口から出て来なかった。
もう、最悪だ。
ほんと、あたしって運悪すぎ。
「沙耶ちゃん、先行ってる」
モタモタしてたあたし達があまりにも遅い所為か男はスタスタと先を歩いて行く。
その背後に“沙耶も引っ張って行って下さい”なんて心ん中で叫んでしまった。
綺麗に服を着こなした男は大学生だろうか。高校生とは違う大人の雰囲気をだしてる。
「ほら、もしかしたらさ、イイ男いるかもしんないよ?」
「いいよ、そんなの」
「明日美もキュンってなる人が居るかも知んないから行くよ」
「ええっ、ちょっ、」
強引に腕を引っ張られながらあたしの足は進んで行く。
行きたくないってば!!もー、ほんと沙耶はたまに強引さがでるんだから…