【短】恋ごころ

騒がしい場所に面する一軒の店。

と、言うかデカイ建物だ。


初めて来たのにも係わらず見ただけで知っている。

だってココすごい有名なクラブだもん。


あたしでさえ知ってる。


扉を開けてすぐに埋もれるくらいの人達で何だかむせ返りそうになってしまった。

派手な女達と派手な男達が楽しそうに絡まり合うのを目にし、奥に進んで行くたびに反響してくる曲に思わず耳を塞ぎたくなった。


「…うるさい」


ガンガンと流れる曲に何だか頭が痛くなりそう。


「おー沙耶ちゃん久し振り」


沙耶の名前を呼ばれて、不意に視線を送ると、また新たな男が座ったまま軽く手を上げる。

つか、誰よ。そこにあるテーブルを囲むようにして座っているのは、女多数と男。


「久しぶりだねー」


ハイテンションになってしまったらしい沙耶は微笑んで手を振っている。


「あの人、明日美好みじゃない?」


なんて訳の分からない事を耳元でこっそりと言う沙耶に思わずブンブン首を振ってしまった。

好みって何よ。あたし、沙耶に好みの話なんてしたっけ?


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