【短】恋ごころ
時間が過ぎるのが遅いって産まれて初めて思ったのかもしんない。
時計をみても全然進んでなくて、一向に沙耶達が帰ろうとする気配も全くない。
帰りたい。
暫く経って、飲み潰れる人達、踊りまくる人達に、その笑い声に本当に気分が悪くなった。
騒ぐ沙耶を横眼で捕らえ、あたしは鞄を抱えてトイレに駆け込む。
「…帰りたい」
手を洗いながら目の前にある鏡を見つめながら、あたしは小さく呟く。だけど、そんな事をしてもどうしょうもない。
つか、このまま帰っちゃおう。
気分悪いからって事にして帰っちゃおう。
勝手にそう考えてトイレを後にした時だった。
「あれ?明日美…ちゃんだっけ?」
そう呼ばれることにいい事はないと思った。
あたしの勘って当たるんだ。凄く…凄く当たっちゃうんだ。
声のする方向に顔を向けると思わず顔が引きつるのと同時に微かな笑い声が漏れてしまった。
「どうも」
軽くお辞儀をする先に居るのは…カケルくんだ。
やっぱ、運悪すぎ。