【短】恋ごころ
「へー…明日美ちゃんもよく来んの?」
「は?」
「ほら、ここに」
「いや、来ないですね」
「ふーん…。もしかしてタクヤと一緒だとか?」
「……」
こんな時にタクヤの名前を出さないでほしい。
「あー、つかアイツはこんな所こねーよな。誰かと一緒?」
「まぁ…友達の付き合いで」
「ふーん、そっか。んじゃあ、またね」
またね。って言われても、もう会う事ないと思うんだけど。
ここにも、もう来ないと思うし。…にしてもカケルくんってほんと軽そう。
見掛けでも、こー言う所、好きそうだよねー…
「あー、そうだ。そうだ」
またね。って言ったのにもかかわらずカケルくんは進めていた足を止めてクルッと振りかえる。
その所為で目が合ってしまったあたしは少し首を傾げた。
「あのさ、これタクヤに返しといてよ」
そう言いながらカケルくんはズボンのポケットからキーケースを取り出し、ジャラジャラと数ある中のカギを一つ外す。
それをあたしに差し出すカケルくんは、
「原付の鍵なんだけど、アイツこねーから返せなくて。学校の駐輪場に置いてっから」
強制的に言葉を続ける。