【短】恋ごころ
「あ、いや…」
タクヤとはもう会う予定ないし。
「明日美ちゃんならタクヤと会うでしょ?」
だから決めつけないでよ。
「あたしより、会う回数多いんじゃないんですか?」
「ん?俺?」
「はい」
「いや、だからアイツこねーから返せねぇんだよ」
「だったら来た時に返せば…」
「うん。けどアイツ不機嫌の時多いから会いたくねぇし」
「えっ…」
何それ…とでも言いたいような言葉。
でも何となくそれを理解してしまった事に、思わずため息が漏れた。
「だからお願い」
この美形な顔に強引さ。
困ったな、あたし。
困るあたしの事なんか気にしてないカケルくんはあたしの手を取り銀色の鍵を握らす。
「えっ、あたし会う時ない」
「じゃ電話すればいいじゃん。明日美ちゃんタクヤと仲いいっしょ?」
“じゃ、宜しく”
付け加えられた言葉に思わず顔が引きつってしまった。
ホント、最悪。やっぱし、イイことなんて何も起こらない。…にしても、困ってんだからそこは空気読んで辞めてほしいよ。
つか、あたしタクヤと仲なんてよくないんだけど…
どうしょっか、これ。そんな事を思いながらあたしは手に握らされた鍵を見つめてため息をついた。