【短】恋ごころ
「まぁさ、何も揉め事起こってなかったからいいけどさ」
いやいや、あたしカナリ揉め事あったんですけど。
沙耶が知らない間にカナリ嫌な揉め事あったんですけど。
そうとは知らない沙耶は買ってきたばかりであろう紙パックのリンゴジュースにストローを差しこんでくわえる。
「あ!ところでさ、」
さっきとは打って変わって表情を明るくする沙耶はあたしの顔を覗き込んで微笑む。
「な、何?」
「タカくんって居たでしょ?」
「は?」
「だからタカくんじゃん」
「いや、知らない」
「はぁ!?何で知んないのよ。車運転してたじゃん」
「へ?そうだっけ」
「そうだっけって、ちゃんと名前も言ってたじゃん」
つか、そんなの聞いてないよ。
興味なんて全然なかったし。
「あー…で、何?」
「タカくんがさ明日美の事、気に入ってるらしいよ」
「は?」
「でさ、男とか居んのって聞いてきたから、居ない居ないフリーだよ。だから好きにして下さい。って言っといたから」
「はぁ!?」
「だって明日美いないじゃん」
「そ、そうだけど…」
「もしよかったら遊ぼ。だってさ」
「いや、困る」
すんごい困る。
それは極力避けたい。