【短】恋ごころ
「何で?」
「何でも」
「明日美、好きな人いるの?」
「いや、居ないけど…」
「ふーん…居るんだ」
「うん…って居ない居ない」
咄嗟に言ってしまった事にあたしは首をブンブン振る。
「あっやしー…」
「怪しくない」
敏感な沙耶は不思議そうな目線を送りあたしを覗き込もうとする。
その目線から思わず避けてしまったあたしに沙耶はクスクス笑う。
「ビンゴ」
「へ?」
「どビンゴってとこだね」
「は?」
「別に隠さなくてもいい」
「何が?」
「顔に書いてある。好きな人が居ます。だからあたしを誘わないでって書いてある」
「ちょっ、そんな訳ないじゃん」
「明日美、動揺してる」
沙耶は面白おかしく、あたしをからかう様に言ってクスクス笑った。
沙耶…最低。
「もう…」
思わず眉間に皺を寄せ唇を付きだす。