【短】恋ごころ
Γあぁ、ごめん」
タクヤの後を追って行くあたしはそのタクヤの背中をボンヤリと見てた。
玄関の前に停めてあるのはタクヤの改造してあるバイク。
バイクに跨ってエンジンを吹かすタクヤは、ゆっくりとあたしに視線を移した。
「乗れよ」
目線で後ろに合図するタクヤは携帯を出して時間を確認する。
「21時か…」
そう続けて呟いたタクヤはパチンと携帯を閉じあたしを見た。
「明日美?」
「あ、いや。あたしはいいや。歩いて帰る」
「何で?」
「何となく」
「は?意味分かんね。危ねぇぞ?どーせお前んちと同じ方向だし」
「うん。けどいい。タクヤ行っていいよ」
「んじゃあ行くぞ?」
「うん。じゃあね」
軽く手を振るあたしにタクヤは“あぁ”って言って響渡るバイクのエンジン音とともにあたしの前を過ぎ去る。
タクヤが行った後、あたしは暗闇をトボトボと歩いた。
別に送ってもらっても良かった。でもどこまでもタクヤに対して甘えるのは嫌だった。
めんどくさいって思われてるかも知んない。
これでいいのかな…あたし。
これからタクヤの行く所は分かってる。どーせ喧嘩か空き地で溜まってるだけ。他の女に好意があるってのも分かってる。でも、女は作らない法則なのかタクヤは誰とも付き合おうとはしない。
タクヤのそう言う所が分かんない。
中学の頃からタクヤは有名だった。この辺りじゃ名前が知れるほどの男。
喧嘩は強いのは当たり前で俗に言うグループの先に立つ男。別にそこに引かれたんじゃない。普段は素っ気ないけど、根はしっかりしてる。そしてふとした時の優しさ。