【短】恋ごころ

「って、うそうそ」


そう言って沙耶は軽く一息吐き、鞄の中から鏡を取り出し見つめる。


「は?」

「だからー、明日美そう言うの嫌がるんじゃないかと思って断っといたよ」

「ほ、ホントに!?」


思わず目を見開き声が高なってしまった。


「うん。ほんと、ほんと」

「いやー…。やっぱ沙耶っていい人だよね」

「何それ。どー言う意味?」

「ううん、何でも」

「つかさ、アンタやっぱし好きな人居るでしょ?」


またそう言ってきた沙耶は鏡で塞がってた顔をヒョイとあたしに向けて覗かせる。


「何で?」

「この前の質問」

「この前の?」

「相手は何も思ってくれないのに寝るだけの関係ってやつ?なーんか、気になんだよねぇ…」

「そ、そう?」

「普通あんな事聞いたら気になるでしょ?って言うか、大概そう言う事って自分の事を言ってんだよねー」


もう一度沙耶は鏡を見つめて髪をイジリながら不満そうに言った。

敏感だ。

敏感にも程がありすぎる。つーか、そんな事をまだ気にしてんの?


うん、けど沙耶だからありえるあか。でも沙耶しか聞く人が居なかったんだよ。


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