【短】恋ごころ

「そんなのあたしな訳ないじゃん。例えって言ったじゃん。例えって」

「そうだけど…」


その後に何を言われるか内心ドキドキしてた。

だけどガラッと開いたドアの先に見える教師に思わず安堵のため息が漏れる。


ダルイなー…と言う沙耶は紙パックのストローを咥えたまま身体を前に向ける。


ホッとした。すごくホッとしてしまった。

鋭い沙耶の事だから次何言われるかヒヤヒヤしてた。


出来るだけこー言う話はしたくない。



1日の授業を平和なくやり遂げたと思った矢先、また靴箱でイズミに遭遇してしまった。

イズミからするとあたしの事なんて全く知らないからと思ってそそくさに帰ろうとした時、


「今日、会うんだ」


思いもよらないイズミの言葉に足が必然的に止まってしまった。


「なーにアンタ。付き合ってんの?」

「秘密」


そう言って笑ったイズミが自棄にムカツク。

なんで頑張ってたあたしじゃなくて何もしてないイズミなの?って思ってしまった。


そりゃ、魔性のイズミの事だから何か特別なんかしてるのかも知んないけど、納得できない。


自棄にムカツク。


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