【短】恋ごころ
あの日、タクヤにもう終わりにしたいと告げてから3週間は経ってしまった。
その間、タクヤからの連絡なんて一切ないし会ってもいない。
そして、あのクラブで出会ったカケルくんから受け取った鍵だって結局は渡せないままだった。
返す手段なんてない。
どうして返そうか迷ったけど、考えても返す手段なんて何もなかったし誰かに頼もうと思っても身近にそんな人は誰一人として居なかった。
クラブに行けば、もう一度カケルくんに会えるんじゃないかって思ったりもした。
だけど行くのすら面倒だし、また何かを言われたらシャレになんないって思った。
別に原付の鍵ひとつくらいなかってもタクヤは困ったりしないと思う。
だから、もうどうでもいいと思った。
「明日美!!」
そう張り上げた声を朝一に出すのは沙耶。
沙耶は椅子に座るあたしに駆け寄って来てすぐ、あたしの肩を勢い良く叩く。
Γ痛いよ、沙耶」
肩を擦りながらため息を吐き捨て、あたしは目の前に居る沙耶を見た。
Γおはよ!!」
Γおはよ…」
Γ明日美、最近調子悪い?」
Γへ?何で?」
Γ最近、休みすぎ」
Γあー…まぁ…」
曖昧に呟いたあたしは鞄の中に顰めていたペットボトルの水をゴクゴクと喉に流し込む。