【短】恋ごころ

「あっ!!ねぇ、見て見て。あの人ってさ、イズミと一緒に居た人じゃない?」


朝のホームルームが始まる直前。クラスメイトの甲高い声が教室に響きわたった。

だから思わずあたしはそのクラスメイトに視線を向ける。…と言うか、実際は甲高い声じゃない。


“イズミ”って言う名前にだ。


反応してしまったあたしに目の前に居た沙耶が突然あたしの肩を揺らす。


「ちょ、誰だろ。また新たな男とか」


そう言いながらクスクス笑うイズミは校門が見える窓際まで行き、身体を窓の外に出す。

そんなのどうでもいい。関係ないもん。って思った瞬間だった。


「ちょ、明日美!!来て来て」


身体をあたしの方に向け手を招いて来る沙耶は“早く早く”と言った感じだった。

別に興味ないもん…って感じで沙耶から視線を逸らした時、


「明日美!!あの人だって!あのタクヤって人!!」


その弾けた声にあたしの身体に何故か冷や汗が走った。

何で?何でタクヤが居んの?学校に来てまでイズミと会いたいのかと思うと何だか息が詰まりそうだった。


視線が沙耶の方向にいかなけらば身体さえも動かない。

しかもよりによってこんな日に学校に来てしまったあたしは馬鹿だ。偶然にもほどがありすぎる。


今日も休めばよかった…


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