【短】恋ごころ
学校ではどうなのかは分かんない。
そのタクヤの姿を知ってるのはタクヤが想ってる人だけが分かってるはず。
1度だけタクヤとその女の人を見たことがあった。そん時のタクヤは笑ってた。あたしには見せないけど笑ってた。そんなタクヤに想われている女の人が羨ましくて、あたしはあの子になりたいって何度か思った。
こんなに頑張ってんのに…
こんなにいつも綺麗にいなくちゃって頑張ってんのに。
それはタクヤには何も通じてない。
暗くなった夜道をトボトボと帰った。でも、家に帰りたいって気持ちが全然湧かないあたしは帰り途中に目に入ったコンビニに足を踏み入れた。
向かう先は雑誌コーナー。何も迷う事なく棚に並べてある雑誌の中からファッション雑誌を掴みとる。
ペラペラと捲って姿を表せたのは、あたしが大好きなモデルさんだった。と、言うよりもタクヤの好みのモデルさんだった。
一度あたしの雑誌に目を向けてたタクヤがふと呟いた。
“この女すっげぇ綺麗”
そう言ったタクヤにちょっと嫉妬した。
あたしもこんな風にないたいって何度思った事か分かんないくらいだ。きっとタクヤはこんな人を好むんだろーなんて馬鹿げた考えもよくした。
よく考えれば、タクヤが想ってる女の人と雰囲気が似てるかも…
「ばーか。お前何してんだよ」
不意に聞こえた聞きなれた声に思わず視線を後ろに向ける。
あたしの背後から覗き込むようにして雑誌を見るタクヤに思わず息が詰まりそうだった。
「何、してんの?」
そう言って慌てて雑誌を閉じると、
「見かけたから」
タクヤは目の前の窓ガラスに視線を向け遠くを眺めた。