【短】恋ごころ
Γ何でもない…」
小さく呟いて視線を下げた時、
Γとりあえず、」
タクヤは一息吐いてそう言ってあたしの鞄をスッと掴み自転車の籠に突っ込んだ。
Γあっち、行こうぜ」
指差す方向は小さな公園がある。その方向へタクヤは自転車から降りて歩きだした。
行こうかどうかなんて悩む事さえ出来ない。だって、あたしの鞄タクヤの籠ん中だもん。
絶対行かなきゃなんない。
だから仕方なくあたしはタクヤの背中をぼんやりと見ながら後を追った。
公園の出入り口にある自販機でタクヤはオレンジジュースをガタンと下に落とす。その落ちてきた缶をあたしにスッと差し出した。
「あ、ありがと」
受け取った後、タクヤは自分のコーヒーを取り出し公園の中に入ってく。
入ってすぐ近くにあったベンチの前でタクヤは自転車を停め、ベンチに腰を下ろす。
「座れよ」
そう言ったタクヤは開けた缶のコーヒーを口に含んだ。
とりあえず座ろうと腰を下ろした時、
「お前さ、嘘つくんだったらもっとまともな嘘をつけ」
一息吐いたタクヤは缶をベンチに置き、ズボンのポケットからタバコの箱を取り出す。
「は?」
何の事かさっぱり分かんないあたしはタクヤの顔をジッと見つめた。