【短】恋ごころ

「お前さ、好きな奴できたとか嘘までついて俺を避けんな」


そう言われた途端、我に返ったように思い出した。

そうだ。あたしそんな事言ったんだった。自分でも馬鹿みたいな嘘をついてまで避けたのにタクヤはそれに気づいてた。


「あ、いや…」


もう返す言葉なんて何もなかった。だから尚更うそバレバレって感じだった。

挙動不審になりそうな自分をとりあえず手に握りしめていたオレンジジュースで紛らわそうと喉にゴクゴク流し込む。


「ホント、お前馬鹿じゃねーの?」


言われた言葉にムカっときた。

別にあたしタクヤに馬鹿扱いされる必要ないし!


だから思わず睨んでやった。

頬を膨らませて思いっきり睨んだ。でもその睨んだのも一瞬だった。


「ちょっと前まで明日美との関係保ってたのに、それがもーなくなると思ったら寂しくなった」


タクヤが言ったその言葉にあたしの表情は一瞬にして変わった。

スッとタクヤから逸らした視線が地面へと落ちる。


何…今更。


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