【短】恋ごころ
「は?イズミって誰?」
「え?」
「だからソイツ」
「だ、だれって…さっき話してたじゃん」
「さっき?」
「ほ、ほら…あたしが行く前に校門で話てた人」
「あー…あいつイズミっつーの?」
「いや、聞かれても…。ってか、まぁそうだけど何で知んないのよ?」
「何でって、知らねーから」
タクヤは本当に知らなかったのか顔を顰めてあたしを見た。
何で知んないのよ。あれほどイズミと話してたのに…
「だって付き合ってるんじゃないの?」
「は?」
「だってそー言う噂だし」
「噂?」
「うん…学校の皆、噂してた。タクヤとイズミが付き合ってるって」
「つか、お前の学校の奴ら馬鹿じゃねーの?何でアイツと付き合わなきゃいけねーんだよ」
タクヤはマジかよ。って顔つきで一息吐く。
俯くタクヤのその表情をみたあたしは、
Γ違うの?」
タクヤの顔を覗き込んだ。
Γありえねーし」
そう呟いたタクヤの顔がグッと上がり、覗き込んでたあたしの顔との距離が縮まる。
あまりに近いせいであたしの顔がスッと距離をあけた。
付き合ってなかったんだ。
良かった。思わず一瞬にして安堵のため息が口から出た。