【短】恋ごころ

「明日美?」

「……」


俯くあたしにタクヤの声が降り注ぐ。

ただ、頭の中はイズミとタクヤの事で一杯になってた。


魔性と言われてたイズミ。

沙耶が言ってた。女から誘ったら男は誰だって寝るって…。付き合ってなくてもヤる事なんて簡単だ。

だって今までのあたしとタクヤみたいなもんなんだから。


「どした、明日美?」


もう一度聞こえた声にハッとする。

ついつい考え込んでしまった所為で返事するのも忘れてたあたしはスッと頭をあげてタクヤを見た。


「あ、いや…」

「…んだよ」


聞くか聞かないか。言うか言わないか。

どっちの選択技も考えてみれば同じ。


でも、そー言うのって気になる。そう思うのはあたしだけなんだろうか。


「あのさ、」


暫く経って出たのは小さな小さな言葉。

結局悩んだ末、どうしても聞きたくて聞きたくて心ん中がむしゃくしゃしてた。


だから――…


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