【短】恋ごころ

「そうなんだ」


なんとなく素っ気なく返したあたしは、何も買わずにコンビニの外へと出る。


「お前さ、帰るんだったら寄り道せずに帰れよ。危ねぇぞ」


あたしの後を追って出てくるタクヤはズボンからタバコを取り出しあたしに視線を送る。


「大丈夫だよ」

「そんな事分かんねぇだろよ」

「分かるよ。あたしを襲う奴なんて誰もいない」


タクヤに対して当てつけだったのかも知れない。

何も思ってないなら見かけても無視してほしかった。こう構われるとタクヤに対する気持ちが膨らむ。

ただ重なり合うだけの友情なんて何もいらない。


「明日美だからいんだよ」

「は?意味分かんない」

「ま、分かんなくてもいいんじゃね?」

「何それ…」


バイクに跨ったタクヤはさっきまで吸っていたタバコを地面に落とし足で磨り潰す。その光景を見ている時だった。


「なーに、お前。女と揉めてんの?」


不意に聞こえた知らない声に、あたしの視線が一瞬にしてその方向を向いた。

そこに立っていたのはいかにも派手で遊んでそうって感じの、あたしの知らない男。その男はクスクス笑いながら足を進めてタクヤに近づいた。


「つか、んだよお前は」


タクヤのめんどくさそうな声を聞いてすぐ、


「タクヤ、また来てなかったね」


女の声にあたしはタクヤから女へと視線を向けた。

と、同時にあたしの目が大きく見開く。

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