【短】恋ごころ
もう帰っちゃおう。
そう思って帰る方向に目を向けようとした時、一瞬だけタクヤと目が合った。
だけど、その目線をすぐに避け、あたしは踵をクルッと後ろに回す。と同時に、
「…明日美」
タクヤが呼んだ声であたしの進めようとしていた足が一瞬にして止まった。
首を傾げたまま顔だけを振り向くと、
「あっ、ごめんね。あたし達もう行くから」
リオさんは何かを感じとったのか、ニコっと笑ってカケルって人の腕を掴んでコンビニの中へと入って行った。
また2人になったあたし達。
「何?」
タクヤにそう声を掛けるとタクヤはバイクに跨ったまま自分の後ろに指差す。
「だから何よ」
「乗れってば」
「いいって言ってんじゃん!!」
「つか何怒ってんだよ」
「怒ってないし」
「怒ってんだろ?」
ついカッとなってしまった。
目の前でタクヤが好意を持ってしまっている人をマジかで見たら何だか自分が苛々した。どうしてあたしじゃなくあの人なの?
そりゃあ可愛いし綺麗だった。
マジかで見たリオさんはホント綺麗な人だった。
要するにモデル体形だ。
あたしとは違う。