大嫌いだから、ね?(短編)
「か、傘は?」

「忘れた」



 ぷいっと顔をそらして、ふてくされたようにいった。

 忘れたって、朝からずっと雨なのに、どうして、忘れるの?



「?」



 首をかしげ、光くんを見続ける私に、彼は気のせいかもしれないけど、少し赤い顔をしながら、続けた。



「急いだから・・・電車の中に・・・忘れた」

「???」



 どうして電車の中?



「いいだろ、別に」


 ますます、そっぽをむく光くん。

 よくわからないけど、傘がないんだ。

 冷たい雨にぬれたら、風邪ひいちゃうよ。



「傘、貸してあげる」



 私はいって、鞄の中をさがす。

 奥にいつも折り畳み傘をいれているの。
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