大嫌いだから、ね?(短編)
「はい」


 差し出した傘に、光くんは顔を引きつらせた。



「おれに、これをさせと?」



 やっぱり、ピンクの水玉模様、ちょっぴりレースつきの、折り畳み傘はだめですか?

 でも、ぬれるよりはいいと思うんだけど。



「陽菜」



 いって、光くんは私がひらこうとしていた赤い傘を手に取った。

 少し触れた手はあたたかかった。

 ぽんっと光くんは傘を開いた。

 私にさしかける。



「方向一緒だし、これで一緒に帰るぞ」

「え? うん」



 びっくりして、反射的に私はうなずいてしまった。



 雨は激しくなるばかり。

 歩き出す、私たち。



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