大嫌いだから、ね?(短編)
「よくおぼえてるな、おまえ」

「それはそうだよ」



 だって、だって返してほしくていっぱいいっぱい、泣いたから。

 光くんは四葉のクローバーをもって、泣いている私を置き去りにしてマンションに帰っていっちゃったんだ。



 幸運の四葉のクローバー。



「ねぇ、あの四つ葉どうしちゃった?

 光くん、なにかいいことあった?」

「・・・。さあね。傘、サンキュ」



 光くんは傘を私に押し付けるように返して、小ぶりの雨の中マンションのほうに走り出した。

 早い。

 あっという間に見えなくなった。



 

 
 
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