友達でいたかったの【短編】
沙羅は急に立ち止まると、俺を強い目で見上げた。
「好きじゃないなら、なんで付き合ったの?」
「え…」
「ゆりなちゃんから聞いたよ。突き飛ばたんでしょ?
タケ、ひどいよ。ゆりなちゃん、怒ってた」
俺だってどうして付き合ったのかなんてわかんないよ。
「ゆりな、他に…なんか言ってた?」
「なんかって?」
「いや…」
『沙羅っちのことが好きならそう言えばいくない?』
ゆりなの言葉が頭から離れなかった。
‐俺が沙羅を好きなわけないのに。沙羅はいい友達なのに。
でも、じゃあどうして俺はゆりなを突き飛ばしたんだろう。
どうしてその時に浮かんできたのが、沙羅の顔だったんだろう。