僕が彼女といる理由
僕と彼女と彼女の彼
その日は雨が降っていた。
気持ちが悪いくらい
空の色はどんよりと
湿った空気がじっとり
肌にまとわりついていた。
あいにくの雨で、
今日の七夕祭りは中止になっていて、
彼女と僕は、彼がバイトしてる
居酒屋に向かっているとこだった。
電車を乗り継ぎやっとのことで
地下鉄から地上に出たとき、
雨は既に止んでいて
空にはやけに眩しく星が輝いていた。
『今日は陽太におごらせよう!
カップルのイベントの日に
バイトを入れるなんて…!!』
そう怒るような素振りをするわりに
彼女の目は優しい色をしていた。
『そのカップルのイベントに
俺を連れてくお前もどーかと…』
そう言いかけて、
殺気を感じて言葉をつぐんだけど
まずい…
遅かった…。。。
『こんな日に私を一人にさせる気!?
可哀想だと思わないの?!ッ鬼!!』
そらきた…
はいはい。
反論しようもんなら
倍になって返ってくる。
でもなぜかいつも彼女の強引な言い分は
不快にならない不思議さがあった。
『つべこべ言わないで行くよ!
今日は飲むんだから!!』
今日は…て。
いつもだろ…。。。
いつも僕らはこんな調子で
三人で過ごすことが多かった。
陽太のバイト先の居酒屋は
僕らはもう常連客と化していた為、
店に着くと見慣れた店員が寄ってきて
挨拶された。
『あれ?
今日はタイヨウさんと
七夕祭じゃなかったんですか?』
”陽太”を逆さにして”太陽”
『タイヨウさん』は
陽太のあだ名だった。
明るく快活な陽太には
ぴったりのあだ名だと思った。
『いや…、バイトじゃないの?
急に休みが入ったから代打って…』
『ああ、そうなんスけど…
今日は記念日だからって
早目にあがってったんですよ』
『…そっかぁ。
行きちがったか?』
僕はチラリと彼女をみると
彼女は携帯電話を開いたとこだった。
『電話してみる!』
彼女は携帯電話のボタンを押した。