僕が彼女といる理由
仲直りのデートは近くにできた
アミューズメントパークになった。


僕たちは駅で待ち合わせをし、
今日が初日だというその
アミューズメントパークに向かっていた。


予想以上に混雑していた駅からの道に
若干うんざりしていたけれど
今日はなにがなんでも彼女を楽しませなければ…


僕は隣で楽しそうに笑ってる彼女をみて
ひとまずほっとしていた。


『ちゃんと迷子にならないように
手繋いでてな』


『なによぉ。仕方ないなぁ。

優ちゃんが迷子にならないように
繋いでてあげるかぁ』


『はいはい。そりゃどーも』


『あっ!
なんか配ってるよ!』


アミューズメントパークの入り口に
ピエロの格好をした人が何かを配っていた。


道行く人はそれをもらって
パーク内に吸い込まれて行っていた。


僕らもそのピエロに近づいていった。



どうやらスタンプラリーのような
イベントをしているみたいだ。


ピエロが配っていたのは
アミューズメントパークの
案内つきのスタンプ帳だった。



ピエロからそれを受け取り
入り口に向かった瞬間、
前方に見覚えある奴が目に入った。


百合だ。


その横には
幸森さんがいた。



向こうは気づかずに楽しそうに
会話をしていた



僕はやっぱりなんだか
すっきりしない気持ちで
暫く二人を目で追っていた。




『…どうしたの?優ちゃん』



まるでスローモーションに
時が流れているかのように錯覚していた。



僕は彼女の声のおかげで
その世界から呼び戻された心地だった。



『……いや。なんでもないよ』


『…そ〜ぉ?』


不思議そうに僕をみてから
まるで子供のように無邪気に
スタンプ帳をみてわくわくしてる彼女に安心した。



もう一度、百合がいた方を
チラッとみたけど、もう姿はなかった。



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