僕が彼女といる理由
『陽太?今どこ?!』


『…あ?百合?
わりぃ!先輩達に捕まって。今家か?』


『もぉ…!今、陽太のバイト先!
優斗と一緒だから早くこい!』



『……ああ、

待っててな』




電話を切ったあとの彼女の顔は
すっかり幸せそうで、女の顔になっていた。


きっと電話口の彼は
僕の知らない、彼女だけが知っている
優しい声の陽太なんだろう。


付き合い始めは彼の方が一方的に
猛アタックしてたのに、今では二人とも
想い合ってるのが判るほど幸せそうだった。




俺も彼女がほしー…





――



『もぅ!何やってんのよ陽太は!!』


結局、店の閉店まで待ったけど
陽太は現れず、僕たちは店をでた。



『ケータイも繋がらないし!!』



『まぁ先輩に捕まったら
そうそう帰してくれないしなぁ。』



『優斗、うち泊まってくでしょ?』



『あ〜…はい。』



終電を逃した僕には選択肢は少なく、
いつも3人で彼女の家で飲み直すことが多かった。




しばらくすると彼女の携帯に
メールが入ったみたいだった。



彼女は携帯の画面をしばらくみていた。



僕はあまり気にせず歩いていると、
彼女がフッと笑う感じが伝わってきた。



きっと陽太からだ。



『日付が変わると同時になんて

意外とマメなんだから…』



独り言のように彼女がつぶやく。




僕は彼女の言葉をアルコールの入った頭で
ぼんやりと聞いていた。



彼のことを想うときの彼女の声は
いつも落ち着きのある柔らかな響きをする。


僕はその彼女の声が
とても好きだった。






『やっと着いたぁ!

陽太ももうすぐくるでしょ♪飲んでよ♪』




そして、僕は彼女と朝まで過ごしたけれど
彼はとうとう現れなかった。





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