僕が彼女といる理由
………観るんじゃなかった。
映画館を出た僕は、
明らかに負のオーラに包まれていただろう。
その映画は有名な小説家のミステリーが
映画化されたものだったけど
内容は平凡な妻子あるサラリーマンが若くて綺麗な女性と不倫する話だった。
ありきたりな映画だと思って観ていたら、
最後の最後で鳥肌がたった。
不倫中、家庭は変わらず平和だったのに、
実は奥さんは夫が不倫してるのを知っていた。
知っていたのに、
自分の今の幸せを壊さないように
普段の穏やかな家庭を保っていたんだ。
そして妻は不倫が終わった夫に
『無かったことにさせないわよ。
一生をもって不倫の罪を償え』
と言わんばかりの言葉を放つ。
しかも、
いつもの穏やかな笑顔で…
………女って怖ぇ…。。。
百合のあの”静”のなかにも
こんな狂気にも似た感情があるんだろうか…
僕が知っている百合では
想像ができなかった。
プルル…
僕のポケットの中で
タイミングを見計らったかのように
携帯が鳴った。