僕が彼女といる理由
百合に口づけた瞬間、
僕の心臓はドクリッと
静かだけど深い音をたてた。
ピシッ…
何かに亀裂が入ったような音を
聞いた気がして…
あれ…?
視界に映るすべてが
揺らめいた。
頬を一筋雫が伝う
”『大切にする』は
その周りのモノも全て愛すことだよ”
……陽太!
涙は溢れるようにボロボロとでてきた。
僕はバカだ…。
陽太を失って
バランスを崩したのは百合じゃない
僕の方だったんだ。
あの温かで
僕の唯一信頼できる
安心できる居場所だった。
百合を繋ぎ止めることで
またそこに戻れる気でいた…
陽太を失ったことを
一番受け入れてなかったのは
僕の方だったんだ…。
僕は陽太を失って
初めて泣くことができた。