僕が彼女といる理由
『……ったく。』
百合はいつの間にか僕の横に
寄り添うように座っていた。
百合の顔を見ると
僕に向かって優しい眼で微笑んでいた。
その目はまだ潤んでいたけど
そこに怯えは感じられなかった。
『…もう大丈夫だよ。』
色んな意味に聞こえる百合の言葉を
僕はあえて詮索しなかった。
もう、僕達の大事なものは
違うものになってたんだな。
急に部屋のチャイムが
けたたましく鳴り、
ドンドン!とドアを叩く音が聞こえた。
怯えたようにドアに近づき
外を伺った百合は、
ドアの鍵を外した。
『…幸森さん?どうしたの?!
奥さんとの約束は??』
『…あれ?』
明らかに慌てて来たと言わんばかりの
幸森さんの様子に僕に現実感が戻っていた。
幸森さんは百合のキョトンとした顔に
逆に驚いてるようだった。
『…百合、俺帰るわ』
百合は相変わらず
何事もなかったかのように、
そぉ?と言って玄関に僕が通れる道を空けた。
『彼女と早く仲直りしなよ?』
『わかってるよ』
そして幸森さんにお辞儀をして
いつものように百合の部屋をでた。
何事もなかったかのように。
僕はそして
僕の大切な人に電話をかけていた。