黒の歌姫
いらっしゃいませという言葉は、この店ではあり得ないのかもしれないと、ランダーは思った。おそらく、この大男の店主は村の顔なじみがやって来ても同じように「何のようだ」ときくのだろう。が、ランダーにとっては、おべっかつかいのくせに追いはぎと紙一重のような、街道沿いの宿屋の主人より好ましく思えた。
「村の入り口にいた男にここをすすめられた。連れに、何か旅にふさわしい服がほしいのだが」
「すすめたも何も、この村には他に店などあるもんか」
大男はカラカラと笑うと、ソニアの姿を上から下までじろじろと見た。
「やれやれ、こんな薄物じゃ寒いだろうに」
彼は独り言のようにつぶやくと、店の奥の方に向かってどなった。
「サイラ! ちょっと来てくれ」
ほどなく若い女性が出てきた。
「なあに、父さん。お客様?」
父親に似ず、小柄でかわいらしい顔立ちの娘は、ランダー達に向かってにっこりと笑いかけた。
「このお嬢さんに、少し暖かめの服がほしいそうだ。奥で好きなものを選んでもらえ」
店主は娘にそう言ってから、ソニアに向かってニッと笑顔を見せた。
「もっとも選ぶほど種類はないぜ、お嬢さん」
「あら、ちっともかまわないわ。新しい服なんて久しぶりですもの!」
ソニアは楽しそうに、店の娘に連れられて奥へと消えた。
「村の入り口にいた男にここをすすめられた。連れに、何か旅にふさわしい服がほしいのだが」
「すすめたも何も、この村には他に店などあるもんか」
大男はカラカラと笑うと、ソニアの姿を上から下までじろじろと見た。
「やれやれ、こんな薄物じゃ寒いだろうに」
彼は独り言のようにつぶやくと、店の奥の方に向かってどなった。
「サイラ! ちょっと来てくれ」
ほどなく若い女性が出てきた。
「なあに、父さん。お客様?」
父親に似ず、小柄でかわいらしい顔立ちの娘は、ランダー達に向かってにっこりと笑いかけた。
「このお嬢さんに、少し暖かめの服がほしいそうだ。奥で好きなものを選んでもらえ」
店主は娘にそう言ってから、ソニアに向かってニッと笑顔を見せた。
「もっとも選ぶほど種類はないぜ、お嬢さん」
「あら、ちっともかまわないわ。新しい服なんて久しぶりですもの!」
ソニアは楽しそうに、店の娘に連れられて奥へと消えた。