黒の歌姫
流木の小枝を拾い集め、オレンジ色の炎がぱちぱちと音をたてる頃には、ランダーも落ち着きを取り戻すことができた。
さっきのソニアのまなざしに、なぜあんなに動揺したのか、ランダーは自分でもよく分からなかった。
――ソニアの「愛してる」は、いつもの事だ。深い意味があるわけじゃない。
ランダーは呪文のように、そう自分に言い聞かせた。しかし、心のどこかでは分かっていた。ソニアが自分を一人の男として見ていることを。
多少の欠点があるにしろ、ソニアとはうまがあったし、恋に落ちるのは簡単だ。いったん恋人同士になれば、ソニアは心からランダーを愛してくれるだろう。
――だが、俺はそれに見合うだけのものをソニアに与えてやれるだろうか。
ソニアは、いつものビスチェとパンツに着替えると、その上に村で買った毛織のマントをひっかけた。
格好悪いことに、さっきからしゃっくりがとまらない。夏とはいえ、頭からつま先までずぶぬれになっていたし、湖畔を渡る風は南部育ちの彼女には涼しすぎた。
濡れた衣類をまとめてさっきの場所に戻ると、ランダーが何事か考え込んでいるように、じっと炎を見ていた。
ソニアは少し離れた場所で立ち止まり、ランダーの姿を見つめた。白い刀傷の残る横顔には、他人を容易に寄せ付けない厳しさがあった。
故郷で何があったのかは知らないが、ランダーは心に深い傷を負っている。そして、それを心の奥に押し込んで気づかないふりをしている。
いつか傷を手当てしてあげたように、ランダーの心を癒してあげたいとソニアは願っていた。
――いつになったらあの人は、あたしに心を開いてくれるのかしら?
ソニアは心の中でそうつぶやいた。
さっきのソニアのまなざしに、なぜあんなに動揺したのか、ランダーは自分でもよく分からなかった。
――ソニアの「愛してる」は、いつもの事だ。深い意味があるわけじゃない。
ランダーは呪文のように、そう自分に言い聞かせた。しかし、心のどこかでは分かっていた。ソニアが自分を一人の男として見ていることを。
多少の欠点があるにしろ、ソニアとはうまがあったし、恋に落ちるのは簡単だ。いったん恋人同士になれば、ソニアは心からランダーを愛してくれるだろう。
――だが、俺はそれに見合うだけのものをソニアに与えてやれるだろうか。
ソニアは、いつものビスチェとパンツに着替えると、その上に村で買った毛織のマントをひっかけた。
格好悪いことに、さっきからしゃっくりがとまらない。夏とはいえ、頭からつま先までずぶぬれになっていたし、湖畔を渡る風は南部育ちの彼女には涼しすぎた。
濡れた衣類をまとめてさっきの場所に戻ると、ランダーが何事か考え込んでいるように、じっと炎を見ていた。
ソニアは少し離れた場所で立ち止まり、ランダーの姿を見つめた。白い刀傷の残る横顔には、他人を容易に寄せ付けない厳しさがあった。
故郷で何があったのかは知らないが、ランダーは心に深い傷を負っている。そして、それを心の奥に押し込んで気づかないふりをしている。
いつか傷を手当てしてあげたように、ランダーの心を癒してあげたいとソニアは願っていた。
――いつになったらあの人は、あたしに心を開いてくれるのかしら?
ソニアは心の中でそうつぶやいた。