黒の歌姫
ランダーの予想どおり、そこは墓地のようだった。真四角く区切られた芝生の上に、大人の二の腕ほどの太さの石柱が整然とならんでいる。石柱は白いものから黒いものまで、素材もまちまちで、表面には亡くなった者の名前らしきものが刻み込まれていた。それぞれの石柱のまわりは身内の者が植えたのだろう、色とりどりの草花が咲き乱れている。
「見て、ランダー」
ソニアが指差した先には、地面がむき出しになっている墓標があった。近づいて墓碑銘を確かめる。
その区画は、ジェイクの家の墓地だった。石柱は二本あり、新しい石柱の墓碑銘は、アマナのものだ。古い方はおそらく、ジェイクの妻のものだろう。
「ここだけが、荒れ果てているわ」
ソニアはしゃがんで、枯れかけた草花の根を手にした。
「ここを掘り返して、ランダー」
「気軽に言うな。墓だぞ」
「だって、アマナの遺体を湖に連れていかなきゃならないのよ。それに掘るのは、ただの土じゃない」
「それにしても、道具がいる」
ランダーはそう言ってあたりを見まわした。
建物の壁際に小ぶりな木の小屋がある。止め金を外して扉を開いてみると、農具がおさまっていた。ランダーはつるはしとシャベルを持ち出した。
縁起をかつぐ方ではないにしろ、墓を掘るのは気持ちのいいものではない。それでも、ランダーは意を決してアマナの名が刻まれた墓石をずらし、土を掘り始めた。
「見て、ランダー」
ソニアが指差した先には、地面がむき出しになっている墓標があった。近づいて墓碑銘を確かめる。
その区画は、ジェイクの家の墓地だった。石柱は二本あり、新しい石柱の墓碑銘は、アマナのものだ。古い方はおそらく、ジェイクの妻のものだろう。
「ここだけが、荒れ果てているわ」
ソニアはしゃがんで、枯れかけた草花の根を手にした。
「ここを掘り返して、ランダー」
「気軽に言うな。墓だぞ」
「だって、アマナの遺体を湖に連れていかなきゃならないのよ。それに掘るのは、ただの土じゃない」
「それにしても、道具がいる」
ランダーはそう言ってあたりを見まわした。
建物の壁際に小ぶりな木の小屋がある。止め金を外して扉を開いてみると、農具がおさまっていた。ランダーはつるはしとシャベルを持ち出した。
縁起をかつぐ方ではないにしろ、墓を掘るのは気持ちのいいものではない。それでも、ランダーは意を決してアマナの名が刻まれた墓石をずらし、土を掘り始めた。