黒の歌姫
周囲の騒動をよそに、ランダーは黙々と土を掘りつづけていた。腰のあたりまで掘り進んだ時、シャベルの先が何か固いものに触れた。ランダーはシャベルを投げ出して、地面の土を手ではらった。
「ソニア、あったぞ!」
ランダーの言葉に、ソニアのみならず、人々は穴に近寄り、中をのぞき込んだ。
黒い木の板が見えた。防腐処理をした木製の棺の蓋だ。
ランダーは慎重に棺のまわりを掘った。やがて黒い棺がすっかりその姿を現した。
ランダーはそっと棺の蓋を開いた。
棺の中、枯れてかさかさになった花に囲まれ、乙女は横たわっていた。
サイラによく似た面差しの、美しい娘だった。薄紫色のドレスの上に、きれいにとかしつけられた長い髪が広がっている。それは向日葵のような金色で、色あせることなくつややかに輝いていた。蒼白い顔は、頬にかすかなばら色さえ残している。
死んで一年(ひととせ)にはなるだろうに、今この世を去ったばかりのようなその姿。
さすがのランダーも肌に粟立つ思いだった。
と、その瞳がカッと開いた。
赤い目。
血潮のようだとランダーは思った。
魔物の目だ。
「離れて、ランダー!」
ソニアが叫んだ。
「ソニア、あったぞ!」
ランダーの言葉に、ソニアのみならず、人々は穴に近寄り、中をのぞき込んだ。
黒い木の板が見えた。防腐処理をした木製の棺の蓋だ。
ランダーは慎重に棺のまわりを掘った。やがて黒い棺がすっかりその姿を現した。
ランダーはそっと棺の蓋を開いた。
棺の中、枯れてかさかさになった花に囲まれ、乙女は横たわっていた。
サイラによく似た面差しの、美しい娘だった。薄紫色のドレスの上に、きれいにとかしつけられた長い髪が広がっている。それは向日葵のような金色で、色あせることなくつややかに輝いていた。蒼白い顔は、頬にかすかなばら色さえ残している。
死んで一年(ひととせ)にはなるだろうに、今この世を去ったばかりのようなその姿。
さすがのランダーも肌に粟立つ思いだった。
と、その瞳がカッと開いた。
赤い目。
血潮のようだとランダーは思った。
魔物の目だ。
「離れて、ランダー!」
ソニアが叫んだ。