黒の歌姫
 空は、雲ひとつなく晴れわたっていた。
 白樺の林に囲まれた湖は澄みきっていて、泳ぐ魚の姿まで見る事ができた。
 鏡のように光る湖水の上を、小さな水鳥たちが風を切ってすうっと飛びかっている。鳥は湖面に影をおとし、一瞬、水をついばむようにして魚を採り、再び空へとゆるやかな孤を描きながらのぼっていった。
 ジェイク、サイラ、そして結局「ジェイクの店」で一晩泊まったランダーとソニア――四人の男女は、一台の荷馬車と一頭の馬で湖にやってきた。
 ジェイクとサイラは墨染めの黒い喪服を着ている。荷馬車の荷台には桜の苗木が一本つまれており、サイラの膝には小さな木の箱舟が抱かれていた。箱舟の中には、サイラが織った金襴の布に包まれて、アマナの遺骨が納まっていた。
 四人は、ソニアが水の精霊を呼び出した場所まで来た。
 木漏れ日を浴びながら、ソニアの白い馬がのんびりと若草を食(は)んでいる。ソニアは馬に駆けより、首をなでながら、優しく言葉をかけた。
 ジェイクとサイラは、波打ち際へと静かに歩いて行った。
 サイラは小さな箱舟を父親に差し出した。ジェイクはそれを受け取ると、その太い腕で愛しそうに箱舟を抱きしめた。
「なあ、ソニア」
 ランダーが言った。
「結局、アマナはどうなったんだ?」
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