黒の歌姫
「もともと〈歌姫〉は七人いるはずなの。一人が死んで欠けると、その年に生まれた赤ん坊の中から新しい〈歌姫〉が選ばれる。そうやって代々、この大陸を護ってきたのよ」
ソニアはそう語った。
城邑の太守たちは、〈歌姫〉たちを処刑し、新しい〈歌姫〉が選ばれないように手を回した。だが一人だけ、カディス城邑の太守がひそかに〈歌姫〉を生かしておいたのだ。それは、罪のない女を哀れんだわけではなく、〈歌姫〉の持つ魔力を手中に納めておくためだった。自分自身のために。
ソニアはその〈歌姫〉の娘で、母からベルー族としての知識と呪歌を伝えられていた。
「あたしが一人前に呪歌を歌えるようになると、カディスの太守は母を処刑したの。本物の〈歌姫〉よりは、あたしの方が扱いやすいから。黒という色はベルー族の神聖な色なの。だから一番高位の〈歌姫〉は〈黒の歌姫〉と呼ばれるわ。あたしはたった一人残った最後の〈歌姫〉だから〈黒の歌姫〉を名乗っていいと母にいつも言われていたわ」
ソニアはそう語った。
城邑の太守たちは、〈歌姫〉たちを処刑し、新しい〈歌姫〉が選ばれないように手を回した。だが一人だけ、カディス城邑の太守がひそかに〈歌姫〉を生かしておいたのだ。それは、罪のない女を哀れんだわけではなく、〈歌姫〉の持つ魔力を手中に納めておくためだった。自分自身のために。
ソニアはその〈歌姫〉の娘で、母からベルー族としての知識と呪歌を伝えられていた。
「あたしが一人前に呪歌を歌えるようになると、カディスの太守は母を処刑したの。本物の〈歌姫〉よりは、あたしの方が扱いやすいから。黒という色はベルー族の神聖な色なの。だから一番高位の〈歌姫〉は〈黒の歌姫〉と呼ばれるわ。あたしはたった一人残った最後の〈歌姫〉だから〈黒の歌姫〉を名乗っていいと母にいつも言われていたわ」