当たらない天気予報
燈籠の明かりも届かない庭の隅、季節柄もう花が咲いていないツツジの植木の影。そんなナイスポジションを見つけて腰を下ろした俺達。
「眠れない」と言ったのは俺。連れ出したのは湊。
同室の友達は皆寝てしまったし、ここなら先生にも見つかりそうにない。


『またその話か。俺、ちっとも気にしてないのに』

『でも、俺は納得いかない!』

『そりゃ、まあ、ほったらかしだったから。メールも殆ど返してなかったし、なんか俺も段々会うのが面倒になってたし』


辺りは鈴虫だか蟋蟀だか、虫の声が響いている。
10月の夜更けの風は、少し冷たく、草の匂いを運ぶ。
二人きり、虫の声しか聞こえない静かな薄暗い世界。
それがやけに非日常的のように感じてきて、自分が高校生で東京に住んでて今は修学旅行中で…なんてどうでもいい情報まで忘れそう。


『一紀はいつも俺とばっかり、一緒にいるから』

『あれ?嫌なの?』

『嫌じゃねえし!…………嬉しいし…………』


付け足された言葉は、あまりにストレートすぎた。
だけど、それに動揺するでもなく、寧ろ多少予測ができていた湊の発言に内心かなり喜ぶ。
湊が俺を好きだというのは、正直、薄々気付いていた。
友達として「like」なのか、異性であっても「love」なのかは解らないけれど。
だけど、相手が湊以外であれば、考えずとも「友達として好き」だと思う。普通なら、そうだと思う。
湊は、俺に余計な考えまで思い浮かばせた。


『俺も、湊といる時間が長いほうがいいなあ』

『そんなこと言ったら、ゲイ疑惑かけられちゃうよ』
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