当たらない天気予報
湊が下を向いて、ぷちぷちと芝生の芽を摘む。


『そうかもね。別に、気にしないけど』


俺が何の気なしにそう言うと、湊は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔で俺を見上げた。


『…何、その顔』

『いや、うん……なんか……』


威勢がいいことが取り柄の湊が、声をくぐもらせる。


『一紀と一緒にいるの、俺、嬉しいし…』

『さっきも同じこと言ってるよ、湊』


馬鹿だな、と湊の肩を小突く。


『……来年も、一紀と一緒のクラスだといいな』

『そうだなあ。俺も、湊と同じクラスがいい』






結果、3年に進級してクラスはバラバラになり、叶わない願いだったけれど、どちらにしても湊と一緒にいる時間が長すぎるということに変わりはない。
男女の仲みたく、付き合っているのかと聞かれたらイエスともノーとも答えられない。
「一緒にいるのが好き」とは稀に言うけれど(あくまで冗談ぽく)、「存在が好き」とはお互いに一度たりとも言ったことがないから。
だから、無論、「付き合いましょう」なんて話が浮上したことがない。
同性に抱く情ではないことには、俺も…きっと湊も気付いている。
異性に抱く情に限りなく近いけど、それとイコールで結ばれるかどうかは自分でも謎。
湊は男の癖に可愛い、誰よりも好き、ずっと一緒にいたい――そう思う。
だからと言って、付き合っていた彼女に抱いていた感情…つまり、「キスしたい」「触れたい」みたいな男子高校生らしい健全な感情があるかと言うと、多分、ない。





難しい。
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