当たらない天気予報
「……一紀は食うの遅ぇなあ」
ぼんやり回想に耽っていた俺に、一紀の声。
「俺、半分食おうか?」
「自分の分食っただろうが」
俺の方に伸ばされた手を、ぴしゃりと跳ね退ける。
「ちぇっ」
湊は自分が食べ終えたアイスのカップとスプーンを、コンビニの袋に入れた。
「…色々、考えてたんだけどさ」
「なあに?」
手持ち無沙汰で大きく伸びをする湊が、気怠そうな返事をする。
「俺…大学、湊と同じところに行きたい」
「…へ?」
空に向かってぴんと伸ばしている途中の湊の両手が、頭のてっぺんでぴたりと止まる。
俺は割と真剣な話をしているつもりなんだけれど、隣に座っている湊は万歳のポーズで、滑稽。
「ずっと湊と一緒にいたい。いつまでも一緒にいられる訳じゃないのは知ってるけど、でも、いられるところまで湊と一緒にいたい」
手の中のアイスが溶けていく。
溶けた部分がどんどん広がって、ああ、こんなことなら最初から湊に半分やれば良かった。
本当は俺だってバニラじゃなくて抹茶にすれば良かったって思う。
だけど湊がバニラを選ぶから。
見計らった“お揃い”でも、俺は嬉しいんだ。