当たらない天気予報

「しねーよ。俺、まだやりたいことあるし」


“やりたいこと”の内容が何なのかはあたしも十分理解しているから、あたしは駿に対して「そっか」としか返さなかった。


「まぁ、でも可奈子にこうして宿題手伝って貰うのも、今日が最後かぁ…」

「我ながら、よくこんな長年駿の面倒見たよね」

「…恩に着ます…」


あたしの足元で深々と頭を下げる駿に、ふふ、と笑いが零れた。
こんな駿の姿が見られるのも、今年が最後かぁ。


「…ちょっと淋しい気もするけどね」

「何が?」

「なんでもない」


首を傾げて頭に疑問符を浮かべる駿を余所に、あたしは駿のテキストを手に立ち上がって机に向かった。
机の横に立てかけてあった駿が座る用の折り畳み椅子を出してあげる。


「さ、ちゃっちゃと終わらすよ!」

「おう!」


窓の外で蝉がじゅわじゅわと鳴く。
夕暮れまでには終わらせてしまおう、晩御飯までには間に合うように。
駿も、多分うちで食べてくでしょ。


今日は最後の夏休み。




END.
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