君のいない教室
「…え?」


久保田は、僕を優しく抱きしめていた。

正直、緊張した。

久保田とは、知り合い以上友達未満だと思っていたから…


「大蔵、偉いよ偉いっ…」


久保田はそう言って、ぎゅっと僕の背中を掴んだ。


「私の前でだったら…泣いてもいいよ。辛かったでしょう?泣きなよ…。」


久保田を目の前にして僕は、不覚にも泣きそうになってしまった。

久保田は泣いていいと言うけど、さすがに女の前で泣くわけにはいかない。


「ありがとな。でも、女に涙を見せる男ってのは、男じゃねぇよ。」

「ふふっ何それ!」


久保田が僕から離れた。

ちょっと残念だと思ってしまった。


「でも、泣きたい時は私を頼ってね?頼りないけど…。」


この時

本気で、久保田にキスをしたいと思ってしまった。



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