君のいない教室
「…クラスが違うから出来る事って、こういう事だったのね…。」


面倒くさそうな顔をして、2組の出入口に突っ立っている久保田に僕は、


「教科書忘れた。貸せ。」


と言った。

そう。クラスが違うから出来る事…それは、忘れ物を借りるという事。

同じクラスの奴に借りるわけにもいかないし、やっぱりクラスが違う奴に借りないと。


「もーっ!大蔵、頭良いくせに、忘れ物なんてするんだ。」

「今日はたまたま忘れただけだよ。いつもは忘れないし。」


なんて見栄を張る。

本当は、忘れ物なんてしょっちゅうなんだけど…。

これは内緒にしとこう。


「私、2時間目理科だから早めに返してよ?」

「はいはい。1時間目の休み時間にちゃんと返しに行くから。」


久保田は、「絶対だよ」と言って、2組から去って行った。



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