片思い物語
私は意味が理解できないまま、その場に立ちすくんだ。
病院に来てほしいと言われた後、電話を切り、コンビニの前から動けずにいた。
「…晴香が、死んだ…?」
ぽつりと、やっと口に出せた言葉がこれだ。
嘘だと思いたいが、晴香のお母さんがそんな嘘をいってくるはずが無い。理由もない。
「なんで?なんで…っ」
とにかく、病院に行ってみようと思った。

走って病院に向かう最中、涙が溢れて何度も人とぶつかった。
どうかこれが悪い夢で、目が覚めたら晴香と一緒に学校に行ってそれで、卒業式の練習して、駅前のカフェでお喋りして、それから、それから…。
もっと、もっと、一緒に居たい…。

そんな思いも、粉々に砕けた。
病院につき看護師に案内されるまま晴香のところについて私は固まった。
薄暗い部屋で、晴香のお母さんは泣き崩れ、晴香のお父さんに縋るように抱きついている。
晴香のお父さんは顔に手を当てて、啜り泣きをしていた。
茫然と立ち尽くす私に気付いた晴香のお父さんが、そっとお辞儀した。
つられて私もお辞儀する。
晴香のお父さんが目を向けた先にあるものそれは、晴香であろう横たわる子。
顔には白い布。両手が胸の上で揃えられ、行儀よく寝かせられたその姿に、私は言葉も出なかった。
ただただ、涙が溢れて止まらない。
「どうして…っ、どうして…っ。」

その日私は、1日中泣いた。
何リットルもの涙を、私は流した。
そして、次の日も次の日も。
通夜も葬式も。
心の中は土砂降りで、私は、涙に溺れた――


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