期間限定、恋人ごっこ

月曜、始まりの日

「スっ……」

変な声出た。
汗ばんだ手の平をきつくにぎりしめ、気持ちを落ち着かせるために深呼吸。

井口と私のほかには誰もいない教室。遠くで、陸上部のピストルの音が聞こえるだけで、とても静かだ。

机に座り、緊張で震える膝を見つめている私には、井口がいまどんな顔をしているのか、見えない。
黙ったままの彼の視線を感じながら、私は一息に言った。

「好きなんだけど井口のことずっと前から！」

順番がぐちゃぐちゃ。
土曜日曜、あんだけどういうか考えてたのに、台なし。
ぽっぽする頬を無意識に押さえて、ぎゅっと目を閉じた。

何で何も言ってくれないのよ。

たっぷり３０秒位の間をおいて、井口は低い声でつぶやくように言った。

「机に座るもんじゃない」

……！