期間限定、恋人ごっこ
放課後。
知里ちゃんがにこにこしながら私のところに来て、からかうように肩を叩いた。
「? なに?」
「いい雰囲気じゃん!」
ちら、と井口に目をやって、知里ちゃんは小声でそう言った。
「え、そう?」
「そうだよー、昨日はどうなる事かと思ったけど」
それは私も同感です。
「今日のお昼、井口も小夏もすごく楽しそうだったから、安心した」
「……楽しそうだった?」
おそるおそる聞いてみたら、知里ちゃんは、「ちょっと入っていけないくらい楽しそうだった!」と明るく言って笑った。
「小夏を取られちゃったみたいで、さみしいよー」
「うわぁ、心がこもってない言い方……」
「あはは。それは冗談だけど」
にー、と目を細めて、知里ちゃんは笑う。
つられて笑いながら井口の方を見ると、彼もちょっとだけ、口元に笑みを浮かべていた。