期間限定、恋人ごっこ
10分くらいの間、黙々と作業をした。
図書室内は静かすぎるほど静かで、紙をめくる音とホチキスの音、合間合間に秒針の音だけが聞こえる。
「上岡」
「はい」
「口がとがってる」
「……」
無意識に不機嫌な顔になっていた私に、井口はそう言って小さく笑った。
「だって」
「ん?」
「デートっていうから」
まさか先生の手伝いをさせられるなんて思わなかったんだもん。
ちら、と井口を盗み見ると、井口は手を止めて、じっと私を見ていた。
「なに?」
「いや……なんでもない」
「言いたいことがあったら言ってよ」
「かわいいな、と思って」
ばさ、と私が持っていたプリントがその場に落ちた。
井口は拾い上げて、とんとんと揃えた。