期間限定、恋人ごっこ

黙り続けて15分。
最後の束を、高らかな音を立てて、井口が留める。

「……終わり?」
「お疲れ様」

ちらっと井口の顔を見ると、彼は真っすぐに私を見ていた。
慌てて目をそらす。

終わってほっとした。けど、寂しい。
ただ先生の手伝いをしてただけだけど、井口とふたりで、うれしかったんだと気付く。

後片付けをしながら、沈黙を振り切るように少し大きな声を出した。

「そ、そういえば、誰も来ないね!」
「あぁ、そうだな」
「本借りに来る人、少ないのかなー」

井口は、まとめた束を箱に入れて持ち上げた。

「職員室前に置いたら、終了」
「ん。あ、ドア開けるね」

井口の荷物を代わりに持って、図書室を出た。

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