期間限定、恋人ごっこ

井口を通してから図書室のドアを閉めようとして、気付く。

(本日、閉鎖……の、札?)

「どうした、行くぞ」
「あ、うん!」

足の長い井口は、すでに数メートル先に。
慌てて追い掛けながら、考える。

あれ、井口が?
なんで?
まさか、……ふたりになりたかった、とか?

いやいや、それはない。だって、一週間しか付き合ってくれないんだよ?
ふたりになりたいとか思ってくれるんだったら、普通に付き合ってくれるはず。

期待したらダメだ、ダメだぞ!

「上岡、しわ」
「!」

井口は、前を向いたまま、そう言った。エスパー!?
広い背中が、可笑しそうに細かく震えてる。

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