期間限定、恋人ごっこ
職員室前に箱を置き、井口にカバンを渡した。
窓の外は、うっすらと夕焼けに染まっている。西日が眩しくて、目を細めた。
井口は大きく伸びをして、深く息をつき、「じゃ、行くか」と呟いた。
「え、どこに?」
帰るか、じゃなく?
彼は、さも当然って顔で私の肩を叩いて、昇降口の方へと促す。
「?」
「デートしよう、って言っただろ?」
「!」
目が真ん丸くなったのが、自分でもわかる。
さっきの手伝いのことじゃなくて?
まさかの下校デート!?
「いや?」
「う、ううん、いく!」
「カフェモカ? ドーナツ?」
「ドーナツ!」
ほんとに! ほんとにデート!?
真意を確かめるために顔を見つめると、井口はふっと笑って。
「しわ」
ちゅ。
私の眉間に、キスをした。