期間限定、恋人ごっこ
金曜、井口の本音…?

金曜日に、なっちゃった。
どうにもならない、やりきれない思いを抱えたまま、教室に入ろうとした私の耳に、吉村の元気な声が届いた。

「井口、おかしいよー!」

井口、の名前に私の身体は固まった。
戸の前に立ったまま、耳は教室内の声に向いている。

「何だよ、早く来週になれ、って!」

来週、の言葉が冷たく響く。
来週。来週になったら、私は井口と、……え?

井口、なんて、

「嫌なことは早く終わった方がいいじゃないか」

いやな、こと?

手からカバンがするりと落ちて、耳障りな音が廊下に響いた。

「あ、小夏おはよ、ちょ、小夏!?」

知里ちゃんの声がした。
けど、遠ざかっていく。

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