期間限定、恋人ごっこ
「……?」
「一週間だけなら」

くるりと黒板の方を向き、クリーナーを手に取った井口は、「付き合ってみようか」と呟いた。

きゅ、きゅ、と黒板を消す音だけが教室に響く。

想定してた返事なんて、イエスかノーのどっちかで、こんな中途半端な答えに対する反応なんて用意してない。

一週間? どうして?
断るならいま断ればいいのに。
OKなら、そう言ってくれたらいいのに。

なんか納得できないような気持ちが、ぐるぐると行き交う。
言葉にならない、もやもやした気持ち。

でも、私から無意識に出た言葉は、

「……よろしくお願いします」

ふ、と井口が笑う。

「よろしく、上岡」





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